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          護り屋異聞記 11.


 がらりと入口が開いた。職人風の男が二人入って来た。見回すと席はすぐそばの二席しか空いていない。

「兄貴、ここしか空いてませんぜ」

 兄貴と呼ばれた27.8歳くらいの男は軽く頷くと奥の席に座った。もう一人はその横に座った。

「おーい!ねーちゃん、こっちだ!」

 座るとやにわに大きな声で言う。お米が急いで注文取りに行く。

「いらっしゃいませ。何にいたしますか?」

「熱燗で2本。それからおでんあるか?」

「はい、あります」

「それと,ぬか漬け頼む」

「はい、わかりました」

 お米は注文をとると入口を出て暖簾を中へ入れた。

「おい、もう終いか?」

 今の男が聞く。

「いえ、もう座るところがありませんので・・・」

「そうか、早く持って来てくれないか」

 男は24.5歳くらいで人当たりの良い感じだ。兄貴分は黙って前を見て座っていたが突然立ち上がり谷崎の方へ向かった。

「先生!どこへ行ってらしたのですか?みんな心配してますよ」

「すまん、よんどころのない事情でな。元気そうだな」

「へ、あっしは元気です。先生、その腕はどうなさいました?」

「うん、いたずらが過ぎてな。罰が当たった」

「先生!ご無事だったんですね。良かった」

 もう一人の男は涙ぐんですらいる。

「先生、帰りましょう。一緒に帰って下さい。みんな心配してます」

「そんなに心配してくれたのか。ありがたいことだ。では、明日帰ることにする」

「いいえ、このままあっしは帰れません。一緒に帰って下さい。お願いします」

「そんな無茶なことはいうな」

「無茶は先生です。8か月もどこに行っていたんですか。でも良いです。帰って下さい。お願いします」

「先生、良かったです。みんな心配しています。みんな毎日寝れないんです。帰って下さい。お願いします」

 もう一人の男も必死の顔で口を揃えて言う。

「みんな元気か?」

「4家族出て行きました。先生がいないから脅しに負けて出て行きました」

「そうか、相変わらず酷いことをしているようだな」

「先生が居れば、やつらは出来ませんでした。お願いです。一緒に帰って下さい」

「太吉さん、どうも事情が切迫しているようです。申し訳ありませんが、これから木場まで行ってきます」

「谷崎さん。事情はわかりませんが、心得ました。私で役立つことがあれば駆け付けますのでお知らせください。場所はどちらですか?」

「かたじけない。木場の二棟長屋と言っていただければすぐわかります」

 それを聞いた兄貴分は嬉しそうに、

「三吉、お前先に帰ってみんなに知らせて来い」

 三吉はそれを聞くやいなや、入口を出て駆けだして行った。
続きは来年1月5日火曜日朝10時に掲載します
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