-
          心の隙間 2.

 男は昨年秋、この仙台市に転勤して来た。コロナ禍にあり、勤務先家電チェーン店は大幅の人事移動があった。

 名を広瀬達也と言う。友人からは寂しくなるが、仙台は広瀬川が有名だから故郷に帰るみたいだなと言われた。

 広瀬は転勤したくなかった。付き合い始めたばかりの彼女がいた。彼女と離れたくなかった。

 彼女と知り合ったのは、その友人のおかげだった。彼女はデパートのネクタイ売り場に勤めていた。

 友人とは学生時代からの付き合いだった。服装をあまり構わない男で、いつも紺のスーツに紺系のネクタイ。

 就職して10年以上も経つが変わらなかった。それが昨年の春、紺のスーツにグリーンのソリッドネクタイをして来た。

 印象がまるで違った。落ち着いて上品な感じがした。しかし、話し出すといつもの友人に戻った。

 初めは何が変わったのだろうと思ったが、ネクタイが変わっていた。それは彼に自然にマッチしていた。

「どうしたんだ、そのネクタイ?」

「うん、貰ったんだ」

「そうか、やっぱり。そうだと思った」

 友人の話では、昨年秋、卒業20年の高校同窓会があり、参加した。美人が何人もいて驚いた。

 女性は化粧をすると変わるものだと思った。顔と名前が一致しない。しかもほとんどが結婚していた。

 その中の一人が同じ世田谷に住んでいるとわかった。しかも独身だという。早速電話番号交換をした。

 東京に戻ると同級生の気安さですぐに会ってくれた。2回目のデートは、丁度クリスマスイブだった。

 互いにプレゼントを渡した。それがそのネクタイだった。友人の大事な日は必ずそのネクタイをした。

 広瀬に会う日にそのネクタイをして来たのは、自慢がしたかったのである。しかし、話は意外な方向になった。

 彼女の友達に彼氏のいない人がいるらしい。会ってみないかと言うことだった。

 広瀬は二つ返事だった。早速、翌週の土曜日、4人で会うことになった。場所はチェーンの珈琲店である。

 広瀬は彼女の静かな雰囲気に一目で好意を持った。すらりと長身で鼻筋の通った綺麗な人だった。

                      つづく
次回は4月2日金曜日朝10時に掲載します